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[ 2025/07/29 17:54 | ]
とある冒険者一行の日誌
 ファガーソンは注意深く洞窟の中を見渡した。
天井は鍾乳石がぶら下がっており、地面のあちこちにも点在している。
隅のほうには粗末な造りの松明台が置いてある。
「みんな注意しろ。いつハイエナキンが襲ってくるかわからんぞ」
タタルとタートは無言でうなずくと東側にある洞穴を向いた。
「オレの勘、向こう、敵いる」
片言の共通語でアイアン・ホークは東側を指差した。
ptは警戒を怠ることなく東側の洞窟へ足を運んだ。

 曲がりくねった洞穴を30mほど行ったところだろうか、洞穴は北と南のT字路に分かれていた。
「タタル、どっちにお宝がありそうだと思う?」
ファガーソンが尋ねる。
「さてね。ここは鍾乳洞だから足跡なんて見つからないし、松明台も無くなってる。もしかしたらハイエナキンはこっちに住居を構えてないかもね」
「しかしギルドからの報告によると、ハイエナキンは財宝を略奪している。その盗品がまだ見つかってない」
「頭の悪い連中だから、隠すとかそういう知恵はないと思うんだけどねぇ…」
タタルはそう言って左右に顔を覗き込むように見渡した。
「こっちからなにか焼いてる臭いがするな。奴ら食事中か?」
北を指差しながらタタルは尋ねた。
「なら都合がいいな。一気に蹴散らすぞ」
ptは愛用の武器を握り締めて北に走りこんだ。

 ハイエナキンは食事の真っ最中だった。
なんの肉かわからないものを焼いて獣のようにほおばっている。
そこへptが一気に戦闘を仕掛けた。
ファガーソンとアイアン・ホークの一撃でハイエナキン二匹の首が飛ぶ。
ダメ押しでタートが呪文を詠唱し始めた。
「これでもくらえ!」
呪文による閃光が走り、リーダー格らしきハイエナキンが倒れる。
残ったハイエナキンも熟練の冒険者にはかなわず、全て倒れた。

「さて、と…これで全部か?」
「かな?…そこに盗品も転がってるし」
「……まて」
アイアン・ホークが奥を指差した。
「まだ奥、奴らの臭い、する」
ランタンをかざすと今までとは全く違う景色があった。
明らかに人工的に作られた石畳の地面と天井。
そしてなんともいえない不気味な雰囲気をかもし出している。
「…どうする?ちょいとばかし探ってみるか?」
タタルは盗品を仕分けながら皆の意見を聞く。
「そうだな…このままギルドに報告してもいいが、お宝目当てで探ってみるか」
ファガーソンは冒険心がくすぐられたか、目が輝いている。

 pt一行はさらなる迷宮の奥へ足を運ぶこととなった…。
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[ 2009/10/19 21:07 | Comments(0) | TrackBack() | ノベル ]
 いつだったか病に伏せて床についていたときに、日差しが眩しいサッシの窓に、鳩が降り立った。
 その時は別段気にはしなかったのだが、その日から毎日同時刻に鳩がくるようになり、一定の時刻になると飛び立っていく。
 さすがに奇妙だと思い、体調が良いときはその鳩を描いてみたり、特徴を文で連ねてみたりした。
 よくよくその鳩を見ると脚に筒のような物がくくりつけてあり、なにかを入れるような形状になっていた。
 
 そんなとき、ふと伝書鳩の存在を思い出した。
特定の場所に手紙を届けるあの伝書鳩である。
 病に伏せていた私はふとこの鳩に手紙を届けてもらいたいと思った。
どこに行くのかもわからず、また、誰が読むのかもわからないのに。
 そこで自分の現在の状況、住所、また、出来れば会いたいという文章を認め、いつものようにやってくる鳩に手紙をくくりつけた。

 手紙を鳩に預けてからの数日、私は想像で胸がいっぱいになった。
「手紙はどこへ行ったのだろう」
「手紙は誰が読んでくれたのだろう」
「手紙を読んだ人は自分に会いに来てくれるのだろうか」
そんなことばかり考えては毎朝やってくる鳩を眺めつつ日々を過ごした。

 数日が経ったある日、玄関の呼び鈴が鳴った。
今時間、家には私しかいないため、布団に体をうずめたまま「どうぞ」と客人を呼んだ。
 
 客人は玄関越しに「私の鳩に手紙をくくりつけたのは貴方ですか?」と尋ねた。
私は、「はい、私です。どうぞ中に」と招いた。

 客人の出で立ちは妙であった。
タキシードにこじゃれた帽子をかぶりステッキを持っている。
ここまでは普通である、が―

 眼は単眼で鼻はなく、口は耳元まで裂け、体格は七尺をゆうに越える巨体であった。
 私は異形の客人にとまどいながらも尋ねた。
「私に会いにきてくれたのですか」
「その通りです。貴方に会いにはるばるやってきました」
「どうして見ず知らずの私に会いにきてくれたのですか」
「私の鳩を毎日見ていてくれたのでしょう。そのお礼に」
「そうですか。しかしあいにく私は病に伏せっている為、なんのもてなしもできません」
「結構ですよ。無理に起きられると体にさわります」
そんな普通の会話が部屋を通り過ぎた。

 一刻ほど経っただろうか。私はいてもたってもいられず、客人に質問をした。
「どうして眼はひとつなんですか」
「貴方の眼より大きいので遠くをより見渡せますよ」
「どうして鼻が無いのですか」
「臭いを感じる必要がありませんので」
「どうして口がそこまで裂けているのですか」
「体が他人より大きいので食べる物もまた大きいからですよ」

―そこで気づいた。

 鳩は餌をおびきよせる罠だったことに。
振り返るとそこにはあの耳まで裂けた大きな口があった―

[ 2009/10/17 21:36 | Comments(0) | TrackBack() | ノベル ]



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